中国では、デジタル人民元(e-CNY)の推進が着々と進められています。
最近の北京2022の冬季オリンピックでも、デジタル人民元の実験が行われ、注目度の高いキーワードとして、いろんなメディアに取り上げられています。
今回は、自分の勉強も兼ねて、この「デジタル人民元」とはどんなものなのか、気になるところを調べてみましたので、記事にしてご紹介しようと思います。
「デジタル人民元」とは
「デジタル人民元」とは、中国人民銀行が発行する中央銀行デジタル通貨です。
中国語だと:「数字人民币」と書き、「e-CNY」とも略称されます。
つまりこれは、中国の中央銀行が発行している「現金と同じ」というレベルのデジタル通貨です。
日本語版のwikipediaはこちら
定義上でのポイントは、「中国の中央銀行が発行」というところだと思います。つまり、国が発行している通貨なので、国が通貨の効力を保証している点です。
デジタル人民元は他の電子マネーとどう違う?
実は最初は「デジタル人民元」は、ただの電子マネーで、一般的に言われている電子マネー(例えばpaypay、アリペイ、WeChatPay)と変わらないかと思っていたが、よく調べてみたら、本質的に違うようです。
まず、「デジタル人民元」は中央銀行が発行しているので、現金と同じように流通させることができる点です。マネーサプライでは「M0」(エムセロ)と位置付けられています。現金と同等ですね。
つまり、紙幣の次の形態、お金の進化、と言ったほうが理解しやすいかもしれません。
以下は、お金の進化の流れ(かなり飛ばしたりしていますが、あくまでイメージ)として、デジタル人民元は紙幣の次の進化形というイメージです。
もう一つ、今のPayPay、アリペイ、WeChatPayと比べてみると、以下のイメージです。
つまり、「デジタル人民元」は現金と同じ位置付けで、「PayPay、アリペイ、WeChatPay」はウォレットアプリとして、「デジタル人民元」からチャージできるというイメージになります。
でも「デジタル人民元」の利用イメージは電子マネーと同じ
上記で紹介したように、「デジタル人民元」の位置付けは通貨と同じですが、使用する時はどんな感じ?との疑問もありますよね。
調べてみると、正直まあ、今の電子マネーの利用イメージと同じように思いました。
「デジタル人民元」をアプリを立ち上げて、店舗のQRコードをスキャンして、支払う。
という流れで、PayPay、アリペイなどのウォレットアプリと同じような使い方になります。
電子マネーでもいいじゃん?いや、実はここが違う
ここまでみると、「でも、電子マネーと変わらなさそうなので、電子マネーでもいいじゃん!?」と思われる方もいると思います。
ここも実は違いがあるのです。
電子マネーは基本、国ではなく、民間企業が運営していますね。例えば
PayPayは「PayPay株式会社」
アリペイは「アント・フィナンシャル(アリババグループ)」
WeChatPayは「テンセント(腾讯集团)」
電子マネーのどれをみても、企業が運営しているのですが、「企業が運営している」ということは営利目的が根本にあります。
例えば、店舗が「PayPay」使えるようにしたい場合、まずPayPayの「加盟店」になる必要がありますが、「加盟店になる」ために、「決済手数料」や「加盟店費用」が発生します。
つまり、店舗は、電子マネー提供している企業にお金が払う必要がありますね。
しかし、「デジタル人民元」の場合はどうでしょう。
国が発行している通貨で、「デジタル人民元」を受け取るのと、現金を受け取ると同じになりますので、「決済手数料」や「加盟店費用」のようなお金は発生しない。つまり、店舗にとっての「導入ハードル」が低いことになります。
電子マネーのリスク
また、企業が運営している電子マネーやウォレットサービスについては、リスクがあります。
企業となると、みんな同じく「倒産、破産」のリスクは存在しますよね。そうなったら電子マネーは消えてしまう可能性も、ゼロではないです。
比べて「国が発行しているデジタル通貨」は国が保証しているので、国が存在している限り、そのデジタル通貨がただの紙切れになる可能性はない。
という点を考えると、電子マネーにはリスクが高く、デジタル通貨のリスクは低い、とも言えます。
デジタル人民元は安全?どんな技術?盗まれない?
デジタル人民元は「ブロックチェーン」技術をベースに、改良を行われていると言われています。
技術者出身ではない僕は、深く語ることはできませんが、ここでは概要を説明しますと、
「ブロックチェーン」技術の利用には、「改ざんされにくい」点と「取引履歴の記録追跡可能」というメリットがあるからです。
ただ、「ブロックチェーン」技術は同時に、「並行性」が弱く「遅延が発生しやすい」というデメリットが存在します。
そういった「ブロックチェーン」技術のデメリットを克服するために、「デジタル人民元」は「ブロックチェーン」技術をベースに改良を行っているとのことです。
なので、
改ざんされにくいという「安全性」を確保するうえで、履歴追跡ができる技術を使用し、さらに「同時利用を防ぐ」「負荷を軽減し遅延をなくす」という改良を行っている、さらにデジタルの通貨ということを併せて考えると、安全性は高い、と言えるでしょう。
まあ、ただの紙幣だと、どこかに落としてしまえば、拾った人が使ってもほぼバレないので、紙幣と比べると、当然安全性が高いというわけですね。
デジタル人民元の強み
安全
ブロックチェーン技術の使用により改ざんされにくく、セキュリティに強い
安心
スマホなどのデバイスあれば使用できる、逆にスマホ盗まれても、スマホの解除とデジタル通貨使用するための本人認証クリアしなければ使用できない。
また遠隔で停止させることもできるらしい。
低コスト、特に送金関係も大きなメリットあり
財布はいらない、物理の紙の紙幣も存在しない(印刷や運ぶなどのコストの節約に)
また、人民元をデジタル通貨化することで、これまで銀行に行って、送金手続きをして、手数料が取られて、さらに着金するのに時間もかかる、といった国内、海外の送金コストも低減することができる。(しかも大幅にできるようです)
現状はまだ海外送金はできないが、もしできるようになったら、国内の貿易、海外との貿易にも寄与することができるでしょう。
さらに、オフラインでも使用可能
デジタル人民元は、スマートデバイスさえあれば、オフラインでも使用可能という仕様になっています。つまりインターネットやモバイルネットワークなどなくても、電波が届かない場所でも利用できるということです。
これは今の電子マネーと比べて、優れている点ですね。
デジタル人民元の課題
デジタル人民元は確かに便利そうに見えますが、まだクリアしないといけない課題は多くあります。
ここでは全ての課題…を取り上げるのはできませんが、例えばこんなのがある。という形でご紹介しましょう。
海外の人はまだ使えない
実際にアプリをDLして登録しようとしたが、まだできない状態でした。(本記事の最後に現状を少しご紹介します)
まあ、中国ではまだ試験段階でいくつかの重点都市でしか使えない状況ですので、徐々に改善されるでしょう。
重要なのは、海外の中国人だけではなく、デジタル人民元を普及させるには、中国人以外の人にどう使わせるか、利便性や安全性を確保するかは、これからの重要課題だと思います。
すぐには、Alipay、WeChatPayの代替にはなれない
そう思う方もいらっしゃるかもしれません。
自分も、どうなるんだろう、どう位置付けるだろうと最初に疑問を持ちました。
実際に現在中国では、ウォレットサービスである「アリペイ」「WeChatPay」で9割の市場をカバーできており、いきなり「代わりにデジタル人民元を使え」というのは、無理があります。
使い慣れているもの、習慣を変えるにはかなり時間が必要ですから。
ただ現在、Alipay、WeChatPayのチャージ手段として使えるようです。
画像の引用元:优游网
よく考えるとAlipay、WeChatPayのようなウォレットサービスが存在するには、サービスが裏でバックアップしているからです。
EC、物流、コミュニケーション機能、補償、投資、駐車、医療、スーパーマーケットなどなど、かなり人々の生活に密接していますので、デジタル通貨として優れているとしても、代替にはかなりハードルが高いと思います。
おそらく、代替というよりは、融合という考えた方は妥当かと、個人的に感じています。
「デジタル人民元」のアプリをダウンロードしてみた
最初に結論を言うと、「まだ使えません…」orz
ただ、気になる方のために、行けたところまでご紹介しようと思います。
iPhoneの日本のapp storeで「数字人民币」を検索してみたが、ヒットせずでした。
中国限定かなと思い、中国のapple idへ切り替えてapp storeで、検索してみたら、ヒットしました。
ダウンロード完了して、アプリを開いたら、個人情報同意が画面、同意を選びます↓
そこで、アカウントが持っていませんので、新規作成。
ただ、中国の番号を持っていないので、+86のところを選択しました。
次に、なんと地域を選ぶ画面が現れたので、「これは行けるかも!」と思い、日本を選びました。
そこで、日本の携帯番号を入力し、「注册」(意味は新規登録)を選択。
次に、認証コード入力の画面が現れましたが、認証コード送信したら、次の画面が表示されました。
表示されたのは、「デジタル人民元は中国でしか利用できない、あなたは中国にいることを確認してください」と表示され、赤いボタンは「私は中国にいます」を選択。
……
まあ、これが最後でした…
認証コードは送られてこなかった…
淡い期待をしましたが、やはりまだ日本では使えませんね。お試しはここでおしまいでした。
最後に
デジタル人民元について、調べたことや自分の理解も含めてご紹介しましたが、いかがでしたしょうか。
中国がデジタル人民元を発行する国際的な戦略という視点でもいろいろと各メディアで論じられたりしていますが、奥が深く、自分はまだそこを論説できるレベルに達していないので、割愛します。
ただ、今回書いた内容で、デジタル人民元に対する理解が少しでも深まっていただけたら、幸いに思います。
では今回はここまで。
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